劇作家相馬杜宇のOfficialBLOG

32歳、脳出血発症中!劇作家の相馬杜宇がホッピー、コンテンツSEO、病院の不可解さについて語るブログです。

さらに面白い作品にするために

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さらに面白い作品にするために

 

相馬杜宇(あいばもりたか)

□台本(戯曲)とは

演劇の台本のことを正しくは戯曲(ぎきょく)と言います。戯曲は必ずアクションとリアクションの連続で出来ています。アクション(リアクション)というのは行動と発言(台詞)です。ある人のアクションが誰かのリアクションを生み、そのリアクションを受けて誰かがアクションを起こし……といったように、常に誰かが「他の登場人物に影響を与えるような」アクションを起こしています。「他の登場人物に影響を与えるような」と強調したのは、アクションとリアクションが絶え間なく起こり続けるには、他の登場人物に影響を与えることが不可欠だからです。ちなみにシェイクスピア作品によく見られる独白は、自分の中でアクションとリアクションを繰り返し、最後には他者に対して何らかのアクションを起こしています。

このように考えた場合、ストップモーションで状況を説明したり、他の登場人物と関わりを持たないナレーションを登場させたり、回想シーンで過去を説明したりすると、アクションとリアクションの連鎖から外れて、話の進行がストップしてしまいます。なので、基本的にはお勧めしません。

しかし何事にも例外がつきものです。状況説明以外の効果があり、それが面白いのであればアリだと思います。

 

□テーマ

テーマは正解のない「問い」にしたほうが豊かな作品になります。例えば「友情とは何か」「なぜいじめは無くならないのか」などです。世の中の誰も正解を知らないのですから、当然簡単には答えを見つけられないと思いますし、書いている中で戸惑いや疑問が生じるはずです。戸惑いや疑問はぜひ作品の中に書いてください。観ている人も一緒になって考えるきっかけになるはずです。また、自分なりの答えを見つけようとするのはとても大切なことですが、見つからないこともあると思います。そういう時は無理をしてテレビや新聞に書いているような答えを書く必要はありません。必死に考えた跡が作品にあれば、観ている人は必ず何かを感じ取ってくれるはずです。

 

□起承転結の役割

○起…どんな場所で、どんな人物がいて、どんな関係なのかが分かる場面。

観ている人に「分かりにくい」と言われたら?

→「起」の状況説明がうまくいっていないことを疑ってみる。

※状況は知っている人から知らない人に話されるのが基本です。また、知らない人に説明するにしてもきっかけが必要です。なるべく自然な流れで説明出来るように会話の流れやシチュエーションの設定を工夫しましょう。

※自己紹介は実は効果的ではありません。理科の勉強で星座を習うより、キャンプに行って実際にその星を見た方がすぐに名前を覚えられるのと一緒です。会話の中で名前が出てきて、観客が「あの人は○○さんって言うんだな」と感じるのが一番望ましいです。

※一から十まで全て状況や設定を説明する必要はありません。作品上最低限分かった方が良いことだけ説明して、あとは観客の想像に委ねるのが理想です。

※どこまで説明したらよいか迷った時はテーマに立ち戻ってみることをオススメします。例えば「白雪姫」で「美の過剰な追求は人間に何をもたらすのか?」をテーマとするならば、女王様がルックスにとても気を遣っていることが最初に分かったほうが良いですよね。このように、テーマによって情報を説明するかどうか、どういう順番で説明するかを考えることが大切です。

 

○承…小さな事件とその一応の解決を繰り返しながら、クライマックスに向かって話が盛り上がっていく。

観ている人に「たいくつ、だらだらしている」と言われたら?

→「承」の部分に事件が少ない、事件はあるが一応の解決がないことを疑ってみる。

※一応の解決がない作品が圧倒的に多いです。例えばいじめが徐々にエスカレートするような展開なら、先生に見つかる、いじめの仲間が裏切るなどのエピソードが必要です。そうすることで先生に見つからないように、仲間が裏切れないように、さらに手の込んだいじめに発展するはずです。

 

○転…最大落差の変化が起こる

観ている人に「盛り上がりに欠ける」と言われたら?

→「転」の部分に落差がないことを疑う。

※最大落差の変化は人物や人間関係の変化です。事件や災害自体は最大落差の変化とは言えません。それを経て人物や人間関係がどう変わったのかが重要です。

※突発的な事故や災害は観客にとっては共感しづらいものです。意地悪な見方をすれば「そんな大変なことがあれば人間が変わるのは当たり前だ」と思ってしまいます。なので起こるべくして起こった事件(人間によるもの)の方が効果的です。

 

○結…起の状況がどう変わる(あるいは変わらない)のかが見える。

観ている人に「(悪い意味で)後味が悪い、肩すかし」と言われたら?

→「結」の部分が「起」で示された状況とリンクしていないことを疑う。

※どう変わったのか言葉(台詞)で語ってしまう作品が多いです。言葉にしてしまうとそれ以上のものにはなりません。ぜひ言葉ではなく、現象(状況)で見せるように心掛けましょう。例えば、家族の絆が深まったのであれば、「あの日を境に家族の絆が深まりました」と言葉にするのではなく、絆が深まった家族の日常の場面を作った方が効果的です。

 

□人物について

登場人物の人物像を考える際によく「キャラクター」という言葉を使うと思います。

キャラクターは元々「文字」という意味でしたが、いつしか「性格」という意味も持つようになりました。これを演劇の世界では「ストックキャラクター」と呼んでいます。

このストックキャラクターは変わらないものではなく、劇の重要な場面で変化するものです。例えば無口な人が突然喋り出したら「おお!」と思いますよね?

このようにストックキャラクターを変化させることで劇にメリハリをつけたり、盛り上げたりすることが出来ます。

一方で、ストックキャラクターで言い表せるような分かりやすい人物ばかりではないという考え方もあります。そういう場合は人物の関係性に着目しましょう。

例えば、Aさんには気楽に話し掛ける、Bさんには話し掛けない、Cさんには会うたびに文句を言う……といったことです。当然それぞれの態度には理由があるはずで、そこからその人物の様々な考え方や好みが浮かび上がってきます。そして、関係性を変化させることで、ストックキャラクターと同じように劇を面白くすることが出来ます。

 

□役名について

役名は作者がその人物をどのような視点で描いているかで決まります。

名前(例:山田太郎)→世界に一人しかいない山田太郎という人物

男、女、母親など…この世の中にいる男、女、母親の典型(もしくは象徴)

医者、先生、会社員…この世の中の医者、先生、会社員という職業の典型(もしくは象徴)

※出番の多い、少ないで決まるものではありません。

 

□場所について

演劇は映画やテレビドラマと違い、場所をコロコロ変えることが出来ないのが普通です。なかには抽象的な空間でめまぐるしい場転をして、成功している舞台もありますが、これは演出の手法も絡んでくることなのでひとまず置いておきます。

場所をそんなに変えられない場合、継続的にドラマを起こしやすい場所、状況を設定する必要があります。例えば家族が出てくる作品で何もない日常の家の中を舞台にしたのでは、お父さんがどんな仕事をしているかとか、息子の学校の成績はどうかとか話しづらいですよね。

でもおじいちゃんの命日という状況を設定すれば、普段あまり交流のない親戚がやってくるので、「○○(息子)はさっぱりなんですよ、勉強は」といった話題も自然に引きだすことが出来ます。

また、平田オリザさんがおっしゃっているセミパブリックな空間を設定するのも一案です。

セミパブリックな空間とは、親密な関係の人も初対面の人も集いやすい空間(場所)を指します。例えば公園、美術館などです。

しかしセミパブリックな空間であれば何でもいいわけではなく、やはり人物が登場し、出会いやすい「状況」も併せて考える必要があります。

つまり、場所は場所+状況で考えることが肝心です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□台詞のコツ

まず、私たちが普段話していることのほとんどは何らかの説明です。なので「説明台詞を書いてはいけない」と思う必要はありません。「面白く」、「自然に」説明することを心がけましょう。そのためのコツをいくつかお伝えします。

 

1、沢山説明しなければいけない時は細切れにする。

例:

A「実は昨日おばあちゃんが入院してさ。だから今日は見舞いに行かなきゃいけなくて部活に出られないんだよね。悪いけど部室のカギ当番代わってくれない?」

B「(教室に駆け込んできて)待ってるよ、先輩」

A「ごめん、今日部活出れないんだ」

B「何で?」

A「おばあちゃん入院してさ」

B「マジで」

A「お見舞い行かなきゃなんなくて」

B「そっかぁ」

A「悪いんだけど鍵当番代わってくれない?」

B「いいよいいよ。早く良くなるといいね」

A「ありがと」

 

2、説明がだらだら続く時は誰かがキレる。

例;

A「明日は練習試合があるし、部活はすごい出たいんだけど、お母さんもおばあちゃんにはお世話になってるんだからって言ってて…」

B「結局何が言いたいわけ?」

A「カギ当番代わってくれない?」

 

3、助詞(てにをは)を省く。

例:

「明日は練習試合があるし、部活にはすごい出たいんだけど」

「明日練習試合あるし、部活すごい出たいんだけど」

 

※これに限らず、台詞では書き言葉として正しい言葉づかいや文法であるかは関係ありません。

 

4、強調したい言葉を文頭に持ってきたり、繰り返したりする日本語の話し言葉の性質を利用する。

例:

「先輩待ってるよ」→「待ってるよ、先輩」

「いいよ。早く良くなるといいね」→「いいよいいよ。早く良くなるといいね」

 

5、会話と対話の違いを意識する

会話…気心の知れた仲間や友達、家族とのおしゃべり→互いを既に知っているので無駄がない。

対話…初対面の人、普段関わりのない人と話すこと。→互いを知らないので慎重になっていることもあり、無駄が多い。

 

6、言葉を厳選する

言葉数が少なければ少ないほど一つ一つの言葉が際立ちます。対話と会話の違いは踏まえた上で、言葉を厳選する工夫をしましょう。

 

7、気持ちをそのまま言葉にしない。

「嬉しい」「悲しい」「辛い」「楽しい」など気持ちをそのまま言葉にすると「どれくらい」なのかが分かりません。別の言葉で表現するように心掛けましょう。

例;「悲しいよー!」→「一人にしてくれる?」

 

□その他

・テレビや新聞、教科書で言っていることが全て正しいわけではありません。みんながやっているから正しいわけでもありません。普段当たり前だと思っていることを疑ってみましょう。そこからあなたなりの作品が生まれます。

・人間は他者との関わりの中で生きています。様々な姿を演じている総てが自分です。

・苦しんでいる人に、もっと大変な人がいると言って励ますのは当事者を苦しめるだけです。他人と比べずにその人の苦しみに思いを馳せてみましょう。

・正論では片付けられない事に作品を掘り下げるヒントがあります。

・登場人物の性格が良いから(悪いから)事件が起きたり、問題が解決したりするお話はなかなか共感を得られません。それは「この人が性格が良い(悪い)から」偶然起こったことになってしまうからです。なるべく性格以外の部分で話を展開できるように心掛けましょう。

・どんなに非現実的なお話でも、観客が共感して観るためには現実的な部分が必要です。「こんなことがもし本当にあったとしたら?」と、身の回りの様々なことに当てはめて考えてみましょう。(作品の展開に関係あることだけ考えていると必ずボロが出ます)

・殺人や自殺はなかなか観ている人の共感を得づらいものです。なぜなら誰しも「あいつ殺してやりたい」、「もう死にたい」という思いは抱いたことがあっても、実行せずに生きてきたからです。どんなに重い背景や動機を考えても、「その程度では人は殺さない(自殺しない)」「我慢が足りない」と思ってしまうものです。それよりは辛さを抱えながら生き続ける人を描くほうがはるかに共感を得られるはずです。(共感なんて得られなくて良いというのであれば、この限りではありません)

 

 

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