劇作家相馬杜宇のOfficialBLOG

32歳、脳出血発症中!劇作家の相馬杜宇がホッピー、コンテンツSEO、病院の不可解さについて語るブログです。

一時外出

今回の外出は一言で言うと、何とか楽しませてあげたい母と、迷惑をかけまいとする私の、全てが裏目に出た一日だった。何かちぐはぐな感じが全体に漂っていた。母が「他に行きたいとこない?」とやたら誘ってくれるが、何しろ退院時期が定まらないので色良い返事が出来なかった。
『車輪の一歩』で車椅子の少女の母親役を演じた赤木春恵さんが「月に2回は新宿連れ出している」という台詞を思い出した。月に2回って、どんな連れ出し方だろう?「へえ伊勢丹」「わあ丸井」みたいに、毎回新鮮な空気を感じているのか?
……そんなはずはない。
気分転換しようとしながらも、どこか色褪せた、いつもと同じ日常を送ることが容易に想像できた。
そう言えば、線路は車椅子が通れなかった。溝があって渡れなかったのだ。斎藤とも子さんが渡ろうとしたら、溝に嵌まってしまい、失禁してしまったシーンだ。イイ線突いてくるな。
…いや、これ、線路無理っしょ。どうやって渡ったの?男性陣。やたら筋肉隆々だけど。
線路一つあるだけで、思わぬ障害があるものだ。
本音を言うと、イチオシの地ビールを案内して、飲んで感想を聞いてみたかった。
スーバードライが大好きで、今は第3の発泡酒を飲んでいる。
私が病気になって、4年間働いた葬儀会社を辞め、サンドウィッチ屋のバイトを始めてからは知るよしもない。
しかし、イチオシの地ビール屋は遠い。母は結構な距離を私の車椅子を押して歩いていて、見るからに疲労困ぱいで、「地ビールは飲めないよ」と言われてしまった。 
しょうがないと思いつつ、正直悔しかった。
病棟では車椅子を自分で漕いで移動しているので、せめて自力で漕ごうとしたら、変な位置に移動してしまい、「何やってるの!」と、結局母が漕ぐことに。病棟のフラットな床とは違って、地面ではやたらガタガタ言うし、緊張して膝が曲がらなくなってしまい、フットレストが外れて、マヒのない右手で何とか押さえつけた。
何とか気分を変えようと、あまり飲みたくもないホットコーヒーを3杯も飲んだ。「めっちゃ美味い!」って言ったけど、ホントはそうでもなかった。
病院明けのつけ麺はただただ塩辛かった。思わず塩分を心配してるのが痛々しい。いったいいつまで続くのか気が遠くなった。
最寄り駅である愛甲石田駅に着くと、「外出が終わってしまうのか」と寂しさが募り、終始無言に。母は十分気晴らしが出来なかったと思ったようだが、実は違う。
バスは予定時刻に着いていた。昇降ドアとのほんの数十センチが二人の溝を深めている。このくらい歩けそうなものなのにと思ったが、「よしやってみろ」と言う人間は誰もいない。たとえ失敗しても、病院の監視下ではやり直しが出来ない。リハビリ時間は限られているし、有限だ。その日のコンディションもある。本当は巨人の星みたいに猛烈に訓練したいのに、人知れず特訓に明け暮れる時間はどこにもない。もし、そんな場所があったらーたぶん金持ちならできるだろう。結局金か…。
バスの車窓から、血圧がはね上がる想像をした。そんなことを考える自分が怖い。
金曜はちょうど体重測定日だけど、何キロになってるだろ?とりあえず断食確定だな。
モヤモヤ考えてるうちに病院についた。夜は比較的落ち着いている。もう春だ。
病院から帰って、看護師が血圧を測る。母が食い入るように血圧計を見つめていた。120ー60。正常値だと分かり、ホッとする母。
看護師がいなくなった後、「ジロジロ見ないで!」と怒ってしまった。ちぐはぐなままに一日が終わった。
このエピソードどこか似てると思ったら、ドラマの葛藤の基本構造だと気づく。

良いドラマが生まれる予感がしている。